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兰柯夢

えてるのかなぁ

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えてるのかなぁ


七海はタクシーに乗り込むなり、住所の書かれたメモを運転手に差し出してそう告げた。中年の運転手はメモに目を落としたあと、どこか心配そうな面持ちでちらりと振り向く。
「ボク、ひとりかい?」
「お金なら持ってるよ」
七海がそう答えると、運転手はバツが悪そうに苦笑して車を走らせ始めた。

めったに見られない車窓からの景色が面白くて、窓にかぶりついてひたすら眺めているうちに、目的の場所についた。思ったよりも時間が掛からなかった気がする。七海の住んでいるところとは別の区だったが、そう遠くなかったのかもしれない。
「ありがと、おじさん」
運転手に告げられた料金を支払い、タクシーを降りる。
正面には七海の背丈よりはるかに高い門が立ちはだかっていた。門柱には橘と表札が掛かっているので間違いない。門の向こうには手入れされた立派な木々と白亜の洋館が見える。まるでイギリスやフランスの貴族が住んでそうな屋敷だ。
表札の下にインターホンらしきものがあったのでボタンを押してみた。だが、屋敷が遠くてチャイムが鳴っているのかよくわからない。聞こえてるのかなぁ、と思いながら連打していると、ほどなくして男性の声で応答があった。
『はい』
「橘会長っていうテレビに出てたおじさんいる?」
『失礼ですが、お約束はございますでしょうか』
「約束?そんなのしてないけど」
『会長はお約束がなければお会いになりません』
「じゃあ、誘拐された澪っていうお嬢様でいいよ」
『申し訳ありませんがお引き取りください』
「あ、ちょっと!」
プツッと応答が切れた。
それから何十回とインターホンを連打したが反応はない。
「もうっ!」
インターホンの応答内容から橘会長の家であることは間違いないようだ。拓海の手帳を盗み見までしてようやくここまでたどり着いたというのに、門前払いでノコノコ帰るわけにはいかない。
こうなれば、もう強行突破しかないだろう。
自分の身長より高い鉄製の門を掴んでよじ登り始める。何度か失敗したあと、身軽さを活かしてどうにか上までたどり着いた。安堵の息をつき、向こう側に飛び降りようとしたそのとき。
「ひゃっ!」
柵の細いところに掛けていた足を滑らせ、意図せず向こう側に落ちた。かぶっていたキャップもはずみで地面に落ちる。
「いったぁ……」
とっさに庇ったおかげで頭は打たなかったが、背中を打ちつけてしまった。顔をしかめながら手で押さえて呻いていると――あっというまにスーツを着た大人の男たちに取り囲まれた。
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