コトダくんの絵は面白い。美大に行ったと言っているから、もともと才能があったんだろう。
ある日コトダくんは天使の絵を描いた。
コトダくんが天使だというまで、天使の絵だとはつゆほども思わなかった。
その姿が、あまりにも 美しくも 神秘的でも 可愛くも 清らかでもないのに驚いた。
買い物かごを持ってトボトボ歩いている感じの普通の初老の女の人だったからだ。
強いていうなら、メガネを外した60前になったのび太くんが、スカートにかつらをかぶって歩いている、そんな感じだった。
どう、この天使、すっきり、こざっぱりと美しいよね、コトダくんは言った。
僕はコトダくんが冗談を言っているのだと思った。けれど、コトダくんは本気のようだった。
コトダくんの美的感覚はいわゆる普通っていうのから大きく外れているのかもしれないって思った。けれど、コトダくんが描く絵で、美しい夢のような色彩のものも何枚も見たことがある。